樹脂、メタルに次ぐ“第3のマテリアル”として、G-SHOCKが強化カーボンの採用を高らかに宣言したのは2019年のこと。航空産業や宇宙開発分野における研究から生まれたカーボンは、一般的なスティールと比べて軽量でありながら、硬質で強靭。そのうえ、温度変化や経年変化にも強いなど、優れた特性を持つマテリアルとして多くの腕時計にも使われている。そんななか、カシオはこの特性を活かして新たな耐衝撃構造となるカーボンコアガード構造を作り上げ、G-SHOCKのタフネスを次のステージへと引き上げた。
翌2020年にはこの構造をMT-Gにも導入。カーボン繊維強化樹脂でケースと裏蓋を一体構造にしたモノコックケースとメタル素材とを融合したMTG-B2000シリーズをリリースするが、これを発展させ、時計側面のベゼルフレームにもカーボンを採用してさらなる軽量化を図ったのがこのMTG-B2000YBDだ。フレームは、カーボンとグラスファイバーのシートを235枚も積層したブロックから切削成形したもので、ステンレスと比べると約77%も軽くなったというからそれだけでも驚きだが、加えて目を引くのが、側面を彩るブラック×レッドのストライプパターン。つまり、耐衝撃性と軽量化のための構造を、デザイン要素としても取り入れたわけだ。
積層カーボンを“見せる構造”としてデザインした最初のモデルは、2019年に限定発売されたグラビティマスター GWR-B1000X-1AJRだ。だが、このモデルの企画が立ち上がる段階では、カーボンをデザイン要素として取り入れる発想はまだなく、強化カーボンはあくまでG-SHOCKのタフネス性能を向上させるためのマテリアルとして捉えられていた。その一方で、G-SHOCKのCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインが推し進められ、強化カーボンとCMFデザインの融合を目指した結果、積層カーボンの断面を見せる構造──いわば“機能的CMF”とも呼べる新しい表現が誕生。そしてこの表現は、構造訴求をテーマとするMT-Gにこそ有効であると考え、MTG-B2000YBDで採用するに至ったのだという。
MTG-B2000YBDは時計の周囲を取り囲むベゼルフレームで積層カーボンを見せる、大胆なデザインワークが特徴だ。だがこのフレームは、単にカーボンとグラスファイバーのシートを積層させて削り出しただけではない。フレームの強度を高めるために、最上層のカーボンシートを3、6、9、12時位置で外側に回り込ませているうえに、ブレスレットとの接合部分はさらに耐久性を持たせるべく、最上層のカーボンシートを筒状に巻き付けている。つまり、ベゼルフレームの成形においてはこれまで以上に加工難易度が上がっているのだが、複雑な工程をクリアしているからこそ、MT-Gにふさわしいタフネスと斬新なデザインが両立できているのだ。
時計を正面から見たときには、精悍なブラックフェイスの上下左右にさり気なく配置されたカーボン特有のクロスパターンがアクセントになり、時計を少しでも傾けると、ブラック×レッドのストライプが目を楽しませてくれる。しかも、このデザインが軽量化と耐衝撃を担う重要なエレメントだというのだから、やはりG-SHOCKのクリエイティビティは独創的であり、理に適っているというほかない。
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